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埼玉県内の蝶の観察と写真、資料を掲載しています。

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<蝶の資料集>

蝶の用語集

インデックス

<あ行> 
亜科 亜種 羽化 越冬 縁毛    
<か行> 
開張 外来種 学名 下唇鬚 夏眠  眼状紋 季節型 
近似種 高山蝶 交尾器 交尾拒否    
<さ行> 
翅形 翅脈 若齢幼虫 受胎嚢 終齢幼虫 食餌植物 スプリング・エフェメラル
性標 ゼフィルス 前翅長 占有行動    
<た行> 
多化性 脱皮 蝶道 同定    
<は行> 
発生 尾状突起 孵化 分布 分類 放蝶  
<ま行> 
迷蝶
<や行>
蛹化             
<ら行>
鱗粉 レッドリスト          
<わ行> 
渡り蝶 和名          

【亜科】(あか)

 分類単位の一つ、科と族の間にあるもので、似た仲間を「科」というグループに分けた後、更に一段階細かくした分類項目の一つです。

【亜種】(あしゅ)

 種を更に細分化する分類単位ですが、すべての種にあるものではなく、種内の地理的変異が大きいものに対して、学名が付けられたものをいいます。(例:ウラジャノメの北海道亜種と本州亜種)

ウラジャノメ(タテハチョウ科)北海道亜種  ウラジャノメ(タテハチョウ科)本州亜種

 ウラジャノメ(タテハチョウ科)では、本州亜種に比べて、後翅裏側の白帯が広いのが北海道亜種です。

【羽化】(うか)

 蛹が成虫になることです。

【越冬】(えっとう)

 冬を越すことですが、蝶では、成虫で越冬するもの(キタテハスジボソヤマキチョウウラギンシジミムラサキシジミテングチョウルリタテハなど)、幼虫で越冬するもの(ミドリヒョウモンメスグロヒョウモンイチモンジチョウコミスジコチャバネセセリなど)、蛹で越冬するもの(クロアゲハナガサキアゲハモンキアゲハジャコウアゲハカラスアゲハコツバメサカハチチョウコムラサキなど)、卵で越冬するもの(ウスバシロチョウミズイロオナガシジミアカシジミミドリシジミなど)、またいくつかの組み合わせなど様々な越冬態があります。

【縁毛】(えんもう)

 翅のふちにはえている毛のことです。

【開張】(かいちょう)

 蝶の翅を広げたときの前翅の先(左側と右側)の距離のことで、標本でよく使います。生きた蝶(自然状態)の場合、「開長」と書くこともあります。

【外来種】(がいらいしゅ)

 本来その地域で生息していたものではなく、国内外の他の地域から、放蝶などによって人為的に持ちこなれたものをいいます。生態系への影響が懸念され、環境問題の一つとされています。蝶では、アカボシゴマダラホソオチョウなどです。

アカボシゴマダラの夏型(タテハチョウ科) ホソオチョウ夏型♂(アゲハチョウ科) 

【学名】(がくめい)

 生物につけられた世界共通の名称のことで、一定の規則により、ラテン語として表記されます。この規則は、それぞれの生物分野の命名規約により取り決められていて、動物には「国際動物命名規約」があり、全世界で通用しています。1つの種に対し有効な学名は1つだけで、リンネによって体系化された二名法(属名+種小名)で表記されます。

【下唇鬚】(かしんしゅ)

 蝶の頭部にある口ひげで、鼻のように見える部分で、パルピ(Palpi)とも呼ばれます。特に、テングチョウでは発達し、天狗の鼻のように見えることから名前の由来となっています。

【夏眠】(かみん)

 盛夏の暑さを避け、活動を休止することで、その間姿が見えなくなる蝶がいます。 

【眼状紋】(がんじょうもん)

 タテハチョウ科でよく見られる眼のような斑紋のことで、外敵を驚かせる効果があると言われています。

コジャノメ(タテハチョウ科)   アオタテハモドキ(タテハチョウ科)

【季節型】(きせつがた)

 年2回以上発生する蝶の場合、同じ種類でも発生する季節によって、翅の大きさや斑紋が異なるものがあり、それをこう呼んでいます。春型と夏型、又は夏型と秋型に分けられます。

オス
   
ヤマトシジミの高温期♂ 2005年8月28日撮影 ヤマトシジミの低温期♂ 2005年10月2日撮影
メス
   
ヤマトシジミの高温期♀ 2005年8月7日撮影  ヤマトシジミの低温期♀ 2005年10月10日撮影

 オスの表側は、高温期では、少し光沢のある空色で縁の黒っぽい部分が幅広くなりますが、低温期では、少し光沢のある空色でも縁の黒っぽい部分はあまりありません。
 メスの表側は、高温期では、全体に黒っぽくなりますが、低温期では、青い鱗粉が出てきます。

【擬態】(ぎたい)

 毒を持たない種が毒を持つ種に似た斑紋を持つことで、外敵から狙われにくくする現象をいいます。

【近似種】(きんじしゅ)

 系統的な類縁関係が近いなどの理由で、外見が良く似た蝶のことで、識別が難しくなります。

アカタテハ  ヒメアカタテハ
   
アカタテハ(アゲハチョウ科)  ヒメアカタテハ(アゲハチョウ科) 

 アカタテハは、表側後翅の赤丸の部分が黒っぽくなります。
 ヒメアカタテハは、赤丸の部分が表側後翅の赤丸の部分まで模様があります。

【高山蝶】(こうざんちょう)

 標高2,000m前後の高山にのみ生息する蝶のことで、日本では13種(タカネヒカゲ、ダイセツタカネヒカゲ、ウスバキチョウ、アサヒヒョウモン、ミヤマモンキチョウ、カラフトルリシジミ、コヒオドシ、クモマツマキチョウ、クモマベニヒカゲ、ベニヒカゲ、オオイチモンジ、ミヤマシロチョウ、タカネキマダラセセリ)が知られていますが、北海道では、低地で見られるものもあります。

オオイチモンジ♀(タテハチョウ科)  ベニヒカゲ♂(タテハチョウ科)本州亜種

【交尾器】(こうびき)

 腹部先端にある生殖器のことで、オスとメスを見分けるときに有効です。

オス
   
アゲハチョウの夏型♂(アゲハチョウ科) 2006年9月5日昼、見沼たんぼ(川口市)で撮影
メス
   
 アゲハチョウの夏型♀(アゲハチョウ科) 2006年9月20日昼、見沼たんぼ(川口市)で撮影

 オスの腹端部に赤丸部分の交尾器が目立ち、夏型では、地色が白くなります。
 メスの腹端部に赤丸部分の交尾器が目立たなく、夏型では、黄色みをおびます。

【交尾拒否】(こうびきょひ)

 交尾時にオスは附属腺分泌液を雌の交尾嚢に送り込みますが、これによりメスの交尾嚢を押し広げます。この刺激は最終的に「交尾拒否ホルモン」の分泌を刺激し、このホルモンが血中に存在するとメスは交尾拒否行動を取るようになります。つまり、一度交尾したメスが再度の交尾を拒否するため、腹部を高く持ち上げたポーズをとって、オスを拒否する行動です。ただし、最近の研究では、しつこく求愛されると2回目の交尾を許すメスがいるとされています。

【翅形】(しけい)

 翅の輪郭の形のことです。一般的に、オスよりもメスの方が丸みを帯びる場合が多くあります。

【翅脈】(しみゃく)

 翅全体に広がる脈状の隆起のことです。普通は、二重のキチン質からなり、その中に気管と神経が通っています。分類上で重要な意味を持つ場合があります。

【若齢幼虫】(じゃくれいようちゅう)

 若い幼虫のことです。

【受胎嚢】(じゅたいのう)

 交尾した後、メスの腹部末端にできるオス分泌物が固まってできたもので、種によって特徴があり、種の分類やオスメスの識別に用いられています。

オス  メス
   
ウスバシロチョウ♂(アゲハチョウ科)  ウスバシロチョウ♀(アゲハチョウ科) 

 メスは、交尾後は赤丸部分のような受胎嚢をつけます。

【終齢幼虫】(しゅうれいようちゅう)

 蛹になる前の最終の幼虫のことです。

【食餌植物】(しょくじしょくぶつ)

 蝶が産卵し、羽化した幼虫が食べる植物のことで、種ごとに異なります。(→蝶の食餌植物一覧)食草や食樹ともいいます。

【スプリング・エフェメラル】(Spring ephemeral)

 直訳すると「春のはかない命」というような意味で、早春に年1回だけ成虫が出現する蝶(ウスバシロチョウツマキチョウミヤマセセリコツバメスギタニルリシジミなど)のことをこう呼んでいます。春植物に対しても使います。

ツマキチョウ♂(シロチョウ科) ミヤマセセリ♀(セセリチョウ科) 

【性標】(せいひょう)

 オスのみに見られる独特な特徴で、斑紋などに見られ、ここから性フォルモンが発散されているものもいます。

ミドリヒョウモン♂(タテハチョウ科)  アサギマダラ♂(タテハチョウ科) 

 ミドリヒョウモンのオスには、前翅表の赤丸部分にに3本の線状の性標が見られます。
 アサギマダラのオスには、後翅の肛角部近くの赤丸部分にに黒斑の性標が見られます。

【ゼフィルス】(Zephyrus)

 語源はギリシャ神話の西風の神ゼピュロスで、本州では、5月中旬〜8月頃まで、年に一度のみ出現するシジミチョウ科ミドリシジミ亜科ミドリシジミ族の日本国内25種(ウラゴマダラシジミミズイロオナガシジミアカシジミウラナミアカシジミミドリシジミムモンアカシジミメスアカミドリシジミアイノミドリシジミオオミドリシジミなど)の蝶のことを俗称でこう呼んでいます。翅の色が緑・青色などで金属光沢があり、美しいものが多く、愛好家がたくさんいます。

ジョウザンミドリシジミ♂(シジミチョウ科)   アイノミドリシジミ♂(シジミチョウ科)

【前翅長】(ぜんしちょう)

 蝶の前翅の根元から先までの長さをいいます。

【占有行動】(せんゆうこうどう)

 オスが縄張り(テリトリー)を張って、ある場所や空間を占有することで、メスとの出会いを高めるために、侵入してきたオスを追い払ったりします。

【多化性】(たかせい)

 一年に複数回、世代交代を繰り返すもので、発生順に第1化、第2化、第3化……と呼びます。

【脱皮】(だっぴ)

 幼虫が成長のため皮を脱ぐことです。

【蝶道】(ちょうどう)

 蝶が何度も周遊する一定の飛翔ルートのことで、占有行動の一つと考えられています。特にアゲハチョウ科によく見られ、オスがメスを探す有効な方法と思われます。

【同定】(どうてい)

 生物の分類上の所属や種名を決定することで、蝶の種名を決めるときにも使います。

【発生】(はっせい)

 蝶が卵から成虫になるまでの世代のことで、卵→幼虫→蛹→成虫の順に進み一世代を構成します。これが1年間に何回繰り返されるかで、発生回数を数えます。

【尾状突起】(びじょうとっき)

 後翅に見られる尾っぽのような突起のことで、日本では、アゲハチョウ科、シジミチョウ科の蝶に多く見られます。

クロアゲハ♀(アゲハチョウ科)本土・奄美亜種 ミズイロオナガシジミ♀(シジミチョウ科)

【孵化】(ふか)

 卵がかえって、幼虫になることです。

【分布】(ぶんぷ)

 蝶が生息する場所や範囲のことです。

【分類】(ぶんるい)

 チョウ(蝶)は、節足動物門、昆虫綱、鱗翅目に属するアゲハチョウ上科、セセリチョウ上科、シャクガモドキ上科に分類されているもののことです。世界には、約2万種類いると言われていますが、日本で確認されているのは、約250種類です。その内、埼玉県内にいると思われるのは、約120種類です。日本では、シャクガモドキ上科に属するものはいなくて、セセリチョウ上科はセセリチョウ科の1科のみで、アゲハチョウ上科はアゲハチョウ科、シロチョウ科、シジミチョウ科、タテハチョウ科の4科存在します。そこから下位に対して、亜科、族、属、亜属、種、亜種という分類がありますが、蝶の名前として呼ばれているのは、種名になります。(→チョウ類の分類表

【放蝶】(ほうちょう)

 人の手で、意図的に蝶が放たれることで、外国産や他地域にしかいない蝶を放つことで、生態系を攪乱するのではと危惧されている場合があります。

【迷蝶】(めいちょう)

 本来の生息地域から、遠く離れた場所へと迷い込んだ蝶のことで、台風が通過した後に見られたりします。遇産種とも呼びます。

【蛹化】(ようか)

 幼虫が蛹になることです。

オオゴマダラの蛹(タテハチョウ科)   リュウキュウアサギマダラの蛹(タテハチョウ科)

【鱗粉】(りんぷん)

 翅の表裏に見られる粉状のもので、体毛が進化して出来たものといわれています。オスの翅に見られ、メスを引きつける独特の香りを持つ鱗粉を発香鱗と呼んでいます。

【レッドリスト】(RedList)

 国際自然保護連合(IUCN)が作成した絶滅のおそれのある野生生物のリストのことですが、日本では環境省が作成した「絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト」も、レッドリストと呼ばれていて、その中にチョウ類も記載されています。(→環境省レッドリスト(チョウ類)

【渡り蝶】(わたりちょう)

 春から夏にかけて北上し、世代交代して、秋に南下する蝶のことで、日本では長距離を移動するアサギマダラが有名です。

【和名】(わめい)

 日本で呼ばれている種の標準的な名称のことで、学名とは異なり、世界で通用する正式な名称ではありません。

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